Destination/寒雪
 


雪が舞い踊る山中を
闇雲に進む
誰にも見取られていない
たおやかな新雪に
足を掴まれても
自分の感性を頼りに
目的地を想って歩く


一緒に死地を駆け抜けた友は
権力の銃弾に倒れた
先に逃げろと
振り絞って叫んだ友の憎しみを
新雪を墓碑に逝った友の苦しみを
心の奥底で握り締め
見たことも無い景色の中を
一歩一歩


背後に迫る拘束を感じるだけで
心臓が早鐘を叩く
寒さで曲がらない足に
渇を入れる
リアル鬼ごっこは
捕捉つまり死
二人分の魂を抱え
折れそうな心を励ます


太陽も月も年輪も
視界から消え去っ刹那
突然蝋燭の灯火にも似た
薄明るい街が
助かった
快哉を叫ぶ代わりに
薄汚れた瞳から涙が止め処なく
自由の夜景がにじんで輪郭を失っていく

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