秋風忌/小川 葉
 
 
 
他愛ないことで
妻とけんかして
外に出て
煙草に火をつけると
おそらく風なのだろう
秋の涼しい風が
背中を
とん、と叩いた

わかっている
誰なのか
わかっていた
言いたいことも

でもね父さん
こう見えて
仲がいいんだぜ
母さんとも
そうだったでしょう

振り向いても
誰もいない

あれから
話す機会が増えた
生きていた頃よりも
二人きりだから
あなたと
二人きりだから
 
 
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