ふやける音/もずず
 

悲しみの色だとか

優しさの音だとか

美しさに焦がれる匂いだとかが

雨に紛れて
胃の辺りを
右往左往している

明日が遠ければ遠いほど
身の丈に合わない闇に苛まれる

布団に突っ伏して考えてみる

なにが問題であるか
なにが苦しいのか
なにが指先を切なくするのか

闇の中から刹那が生まれては
音も漏らさず消えゆく

例えばあのとき
などと不眠を象る仮定に辿り着いては
頭を深く沈ませる

目が冴えて
目が冴えて
雨音にそっと手を伸ばす

ピシャリと弾かれる

今宵もうずくまるしか
空間に溶け込む方法が見当たらない



いのちの
ふやける音がした





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