ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
までかけより、牧師の突き出していた人差し指を、やさしい、やさしい、ゆっくりとしたモーションで握り締めると、彼らはしばし見詰め合っていた。
 俺はもう確信していた。あの夜空を覆っていた二つの影はこの二人の体から発せられているある種の幻影だったのだと。俺は窓から出て、夜空を見上げてみた。やはりもうあの二つの影はなかった。月が雲にかすんでいた。どこまでも麦畑が広がっている。そして、うつむいた。農家の周辺はコンクリートブロックで覆われていたが、窓のちょうど真下に、灰皿が置かれてあり、そこに水が溜まっていて、カエルが入浴していた。見ていると、わけもなく照れてきたので、またみんなの方を向いた。デブと牧師は全
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