ハッとして、ぎゅっとして、グッと目覚める恋だから ※1/(罧原堤)
 
ている。そして意志も。あの目のかがやき。ただごとじゃない。あれはこちらの様子をうかがっている生きている目だ。ぱっちりと鋭く光り、その鼻は天狗には劣りはするがほこらしげに反り、せせら笑い責めるように口元はゆがみ、薄く紅の口紅が塗られていて、なんだか乱れている。染めたとは思えないたんぽぽのような髪の色やその表情が。間違いない。彼女しかいない。僕の視界に入るのは。彼女が答えだ。
 今晩、街路に電燈がともったら、半裸体になり彼女のそばでダンスを踊る。夜くらいだ、心が落ちつくのは。暗い、夜だけ。悩みや煩悶ははじけ飛んでしまう。だって世界は僕の脳内にあるから。悩みは僕だけの中にある。だから、彼女と僕の二人だけしかいなくても、みちたりることはできるのだ。街灯の下では誰もが変態になれる。精気みなぎる獣に。
 あの娘がはがされる前に、雨風でボロボロになる前に、部屋の壁に貼り付けよう。あの娘の裸は僕だけのもの。ほかのやつらに見せたくない。
 おめかしをした花嫁が足音高く階段をころげ落ちるように。赤い炎をたなびかせて。

 ※1 田原俊彦がうたってる歌詞から引用
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