ハッとして、ぎゅっとして、グッと目覚める恋だから ※1/(罧原堤)
 
 燃えさかり叫び狂い苦しむたましいの雄たけびはこの世への憎さ、うらみつらみだけからもたらされていたのか。負の感情もなくなり、もはや若くない。嘆く資格も、そんな自分に酔うルックスも、ゴールド免許もなにもない。顔も悪いし、部屋にはクーラーもない。だが、天性のある奴ならどんな環境でも……、山のいただきでもふもとでも……、顔色が悪くても。
 あたまがぐらぐらする。ふらふらして、めまいがして、変てこなものが歩いてくる。おそらく僕にしか見えないし、触れてはいけないものが。ハッとする。
 そいつは小さいながらも紛れもない、まごうかたなき天狗。長い鼻をたらして、不貞腐れた態度のまま本の山からおりて、おざなりに
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