夜の二人/プテラノドン
看板の広い背中にすっぽりと隠れた二人は
サウナから出た時点で 遠回りするつもりだった。
遮断機のように通せんぼする右手。
タクシーが止まる、雪が降ってきていたのかもしれない。
交錯する足跡なんてそんなもの
喋り続けて 塗りつぶしたっていい。
拙い落書きかシミの類によって紙幣が現実味を帯びるように
手放すのも一つの手だ。
領収書の名前の中でのみ生き続ける亡霊たちに
願わくば出くわさないようにと 覆う手のひらの隙間からも
音楽は鳴り止まずに、扉の向こうでは
男が女の腰に手をあてながら歌っている。
赤いネオンを浴びて 画面に映る点数は
もはや数字でなく別物として換算される。
席に着いた女の視線―それだけの明りの中で
睨みあう二人は微動だにしなかった。
それはただたんに可能性を残したかっただけ
シャッターが次々に下ろされる最中、
あれはいつになったら笑い話に変わるのかな
と唾を吐きながら二人は言った。
まるでそこに自分の顔が映り込む
水たまりがあるみたいに
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