憶えています/寒雪
 


目前には
静かに横たわる
あなたの骸
物言わぬあなたを前に
私はあなたの
か細くてたおやかな右手の
手首から一気に切り落とす
出来上がった肉塊を
躊躇わずに口に含む


異なる螺旋の連なりを
自らに同化させるため
私はあなたの右手を
私の内に取り込む
そうして
私とあなたは完全になる
昨日の月光が
明日の陽光に駆逐された時
私の中で
あなたは生き続ける
私の心臓が
あなたの代わりに鼓動を打つ
だから
なにも気にせず
次の世界へ進んでください
私は
あなたを憶えています

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