タイムサービス/小川 葉
ていった
まもなくタイムサービスが終わるのだ
駐車場で車に乗りながら
父が手を振っている
タイムサービスが終わる
父は白い車に乗って
駐車場を出ると
秋の空高く飛んで行ってしまった
レジでは店の人が
お会計はもう済んでます
と言って
お釣りと言って渡した白い紙に
文字が書かれていた
父の字で
あの家をたのむ
母さんもたのむ
お盆にいっしょに飲みたかった
みんなが好きなものを食べさせたかった
間に合わなくてごめん
父はいつもそうだった
私ははじめて父を失った子供のように
ひとり立ちつくし
空を見上げていた
死に際に会えなかった
私に会えて
気が済んだのだろう
父さんが行ってしまった
ほんとうに
行ってしまったのだ
昔かわいがっていた
飼い犬の大五郎が
雲の上で
うれしそうに跳びはねている
ずっと待っていたのだ
父の白い車に乗って
どこまでも走っていく
遠い空を
私はいつまでも見ていた
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