リトルナゴヤとカブトムシーズの冒険-1/水町綜助
 
線路というやつはなんだって
この直線的な箱を
ねじ曲げることなく
流していけるのだろう
緩やかに曲がってくクセして


ぼくは客車のぱさぱさとした手触りの赤い
キルトのようなベッドの上
細胞ひとつひとつに火を灯すような
太陽を水晶体に潜らせ
氷の中に閉じ込められた空気のような
まぼろしを国家として
その土を旅行している

道連れはロックバンド カブトムシーズと
広告代理店社長マ・吉田氏のふたりだ
「リトルナゴヤ、月からの視点で考えてごらん」
マ氏は電子タバコをぷかりと吹かすと
横でジョイントを吸っているカブトムシーズの気門に水蒸気を吹き付け、ヒュウと吸い込み
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