予定通りに行くと/小川 葉
 
 
 
この人生を
すでに一度経験したような
気持ちになることがある

高校を出て
失われた十年が
やがて二十年となり
ある日突然
大切なものを失う

そして私は
実家の庭の椅子に腰掛け
あの日こうしていれば
などと思いを巡らす

すでに手遅れで
打つ手もなく
いつか私一人になっても
いつかまた
この椅子に腰掛け
真夏の桜の木を
見上げていることだろう

ここが好きだった
ここでこうしてるのが
好きだった
と、思い出しながら

予定通りに行くと
私もいつか
死ぬのだろう
その日まで

私は何度となく
この家に
さよならを告げに
訪れては
また何度となく
過ぎ去りし日々を
思い出していくのだ

幼い頃
母さん、釣りに行ってくる
と言ったまま
戻らなかった
もう一人の私のために
 
 
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