忘れない/寒雪
きみがぼくにくれた
ヒルクライムのCDみたいに
どうしても捨てられないものもあるけど
大抵の物は
壊れたり使えなくなったりして
取り替えてしまって
ずいぶんぼくの生活も
自分の色が強くなった
一日が繰り返す中
ぼくの心の波風もずいぶんと凪になった
でも
悲しみは薄れていくが
決して自分の中から
消えていくわけじゃない
きみの命日に
泣きそうな思いを拾い集めながら
きみのことを語るのは
きみがそこにいたことを
少しでもいい
時の流れの濁流に向かって
刻み付けておきたいから
ぼくが生きているのに
きみがなくなってしまうことに
まだ耐えられそうにない
だから
枕元のフォトスタンドに
一番の笑顔なきみがい続けることを
笑わないでいてほしい
きみを忘れたくないだけ
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