風紋/夏/萩野なつみ
 
この街はひとつの詩篇しずやかに置手紙のような息を吐くひと


光さす野をひたすらにゆくがいい、君、セルリアンブルーの尾びれ


湯豆腐を崩さぬようにくずしつつ星の底までゆきたいと言う


あけがたのポストは青くうまれくる前にあいしたひとからのメモ


テールライトともして環七走りゆくきみは死んでも星にならない


誘蛾灯に焦がされてゆく幾百の羽、羽、羽、(あれはだれのてのひら)


エル・ドラードと名付けた朝の隙間からこぼれるばかりの虹に切手を


星は幾ついのりを抱(いだ)くセルリアンブルーの果てにしずむ曳光


発光するさよならだけに水やり
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