マインドストーカー/寒雪
 


遺書は机の引き出しに認めた
見られて困るものは処分した
必要な道具は取り揃えた
夕闇が人々の暮らしを
真っ青に染める時
ぼくの計画は始まる


ぼくはこれから
隠し持った銃を手に街へと向かう
そして
駅のホームにたどり着いたら
6時15分着の各駅停車から
家に帰るため降りてくる人間を
狙い撃ちしてやるのさ


ぼくの人生は今まで
一片の青空もなく
日陰に生えるコケが
水分を奪われて干乾びる
そんなつまらない人生を送ってきた
でも
ざわめく日常も今日で終わり


なぜと問われても
話す気はない
ぼくの行為は
センセーショナルにTVメディアを飾るだろう
その時
それを見たぼくのことを知る
幾許かの人たちが
ぼくのことを脳裏の奥深い闇に刻んで
その後の人生を生きていく
そうなったら
ぼくの計画は成功
ぼくは死んだ後も
精神的なストーカーとして
人の心に巣食い続ける
これがぼくの最後の願い

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