たゆたう、もの/松本 卓也
 
たった一つでも
感情を込める事が出来るなら
嘯いた無意味な言の葉に
深さも重さも与えられるのに

明朝に目覚めるまでの数時間
向き合った壁の高さに目を背け
僅かながらの自由を数え

そんな肖像画を何度も塗りなおし
単なる存在に理由付けする作業

とうに疲れ果てているのだけど
そうでもしなきゃ生きてさえいけない
どこかの誰かが鼻歌と共に吐き散らす
愛の勲章を耳の端に引っ掛けつつ

どうやれば適切な労務費の算出が可能かって
現実の業務に心を奪われる瞬間がある
目を瞑れば十年後の孤独に苛まれ
いつか来る永久に怯える心情がやってくる

現実から逃れる為に妄想する
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