今日一日/小川 葉
 


峠を越えると
雨は止み
雲の隙間から
一筋の
光が降りていた

神様が
父を迎えにきたのだ
私を待たずに

もう何もない
父の体を抱く
まだあたたかいのは
生きていたからだ
私を待って
生きていたからだ

父と二人
寝台車に乗る
病院から家まで
日が暮れた
地平線がまだ赤い
とてもまだ赤いのだ

空の向こうで
泣いている
今日一日が終わらない

いつまでも
閉じてくれない
父の目を
今は涙越しに見ている


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