結婚式、ラップタイム、二日酔い/ブライアン
友人の結婚式で訪れた故郷。山が四方を囲んでいる。幾多の虫の音が聞こえる。駅のホームには人の姿が疎らだった。日焼けをした高校生の男女。運動部の学生だろう。大きなボストンバックに汗をふくためのタオルが、皆一様にぶら下がっている。
秋口に入ると、急に寒くなる。東京の執拗な残暑とは裏腹に、あまりにもさっぱりとしていた。四方を囲む山は、緑の葉を茂らせて掃いたが、明らかな空気の違いに秋が訪れ、やがて冬になるだろうことを直ぐに理解するだろう。最後の繁茂とばかりに、次第に乾いていく空に鮮やかな色彩を残そうとしているようだった。
小さなカバンから、ポータブル音楽プレイヤーを取り出し、定子ボタンを押す。蝉の
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