夏の亡霊/A道化
 

 そう気がついて(…悪くない、)と笑う。ふふ!悪くないどころか素晴らしい。泣き笑う。

 化けて出たらいい、
 夏の肌、髪、その色、その熱、その音、その重さもその言葉もみんな、何度でも化けて出たらいい。秋になって冬になって1年が経って5年が経って私はときどきそれら無数の亡霊のひとつに知らず知らずのうちにとりつかれて操られて、ふと、語り始めるだろう。「そういえばあの夏、」というふうにして。


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