なつゆめ/ゆえづ
赤はキャンバスでひび割れて
浴室はまっ逆さまに抜けた青
蛇口ひねれば
夏の匂いがつんと刺す
流れだしそうなタイルの上
わたしたちは
今にもぱちんと弾けて滲む熱
気泡ざわめくソーダ水
グラスに注げば
夜の泣き虫が合唱する
なつゆめの
窓格子ひっ掻いて白ちりばめた
あまのがわ
くらげの風鈴たゆとうとき
ずんずん ずん
忘れたうたに少女を孕み
こぼれる蕾たち
まさらな肌へ
ひとしずくの太陽をすべらせ
朝が突き上げる
あかい鼓動を叩っつけ
球根は爆発する
青冴えわたる
午前5時
あめあがり水たまりの虹
剥がれ落ちるうた跳ねあげて
駆けるあなたは初夏の風
バスタブはまだ泡のあくび
え
う
れ
か
わらうわらう
ゆらゆら青すぎたアクリルの陽炎
戻る 編 削 Point(1)