狭間/寒雪
子供の頃
ひとかどの人間になれると
心の底から信じていた
そこには確かに
光り輝く未来への
道程を示す道標が
目の前に現れていたはずだった
けれども
大きくなるにつれて
何もない自分が
ぼくの心を打ち砕く
ガラスの努力は壊れて消えた
自分は素敵な人にはなれなかった
ならばいっそ
悪人になりたかった
世界中の人から
通りを行く時
大きな石のつぶてを
投げつけられる
そんな憎悪の対象に
でも
自分にそんな度胸がないことも
わかっていた
どちらにも針を振ることが出来ない
自分を憎んでしまおうと
鏡に映る自分を壊してしまおうとしたけ
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