矢/三田九郎
白濁煙が後方にたなびき
あの雲に乗りたい
乗客が飛び降りてまた藻屑と消えた
死に向かって飛んでいく
舞台の突端に明日が待ってる
何の悲喜劇も帯びない跳躍
夜明けは希望の合図ではない
前方が時折陰りを増す
黒衣の大鳥が上空を蛇行している
何光年の後ろに
落とし穴から這い出るおじさんが見えた
小さな星は僕らに向かってまた光り始めた
「取りに来ないか
帰り道はこれから教える」
今日もまた電話をかけているらしい
昨日、希望を忘れた者達が
落とし穴をまた掘るだろう
と
星がまた遠くなった
目の前に突端が迫ってくる
この瞬間に帰ることはできない
何も聞えない
もう電話は鳴らないのか
戻る 編 削 Point(0)