果実について/salco
段であるかのように
性は互いの粘膜へ入り込む事を激しく欲求する。
接吻は、触れ合おうとする欲求の最先端行為だ
唇と唇、舌と舌、口腔と口腔、唾液と唾液
誰が相手を吸い尽くす事ができたろう
誰が相手の食道へ入り込む事ができたろう
交合が満たされるためしは無い
理解の深まるためしは無い
所詮、狎れ合いの確認手段でしかないのだ
互いを貪る事もできず、融合も同化もできない
そして何も残らない
何一つ捕まえておく事もできず
過ぎて行くだけ。
洗濯物の山を右から左へ
刹那の満足から刹那の満足へ
何と虚しい事だろう、愛はもっと多くを望むのに。
あるいはもっと些末な永続を望むのに。
人間という動物がもっと高等な幸福に充足できる者であったなら、
接吻も果実も必要とはしない筈だ。
人類は、
アナタとワタシ、アナタとワタシ、のモールス信号を
打電し続けている。
アナタとワタシ、アナタとワタシ、アナタとワタシ・・・
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