脳内ドキュメンタリー/寒雪
輪の中には入ろうともせず
ただ外側から
人々の行列を
心の奥底にあるファインダーを通して
脳裏に刻み付ける
鬼の面を付けて歩く集団は
夕闇の薄暗さに溶け込んで
浮き上がって空中遊泳をしている
百鬼夜行さながらに見える
近づいて見たいと思ったけれど
子供の頃に読んだおとぎ話のように
食べられてしまうのかと思うと
行列が遠ざかっていく
その光景を
ただただ見送るだけしか出来なかった
後日振り返って
ぼくはその日を
友達たちに面白おかしく語る
友達たちは大声で笑ってくれたけど
一人になった時ふと思うことがある
もしあの時そばに近づいてみれば
そこにいる人たちの息遣いが
ぼくの恐怖心を打ち砕いて
もっと面白い話が出来たのかもしれないと
遠く離れた街で
自分たちのことを適当に語られる人たち
少しの勇気があれば
もっと楽しかったのかもしれない
次に行く時は
行列に勇気を出して声をかけてみよう
そんなことを考えた
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