輪廻転生/寒雪
仕事から帰ると
夕涼みがてら
バルコニーのテーブルに
紅茶を二人分用意して
薄暗い街並みを眺めるのが
ぼくの日課
休みの日は朝からずっと
雨の日も
雪の日も
出来る限り
ぼくはテーブルの前に腰掛けて
あなたからの交信を待ってる
不意の事故で
あなたがいなくなってしまってから
もうどれくらいの年月が
流れてしまったのだろう
辿り着いた病室の
冷たいベッドの上で
ぼくに気付いて
向こうから連絡するから
とだけ言い残したあなた
その日からぼくは
あなたの連絡を待ち続けている
人が聞いたらバカだと思うだろう
自分でなければ
ぼくもそう思うだろう
あなたが連絡をくれるなんて
非科学的もいいところなのに
でも
ぼくは信じている
あなたの肉体が滅んでも
魂は残ることを
たとえ形が変わったとしても
あなたは必ず存在している
そう信じて
ぼくは今日も二人分の紅茶で
お腹を膨らませる
戻る 編 削 Point(0)