渇き/水島芳野
夢の中の少女は夜毎、僕に向かって「殺して」と笑む。
ひどく渇く、ああ、僕たちは渇いている。君が。あなたが。僕が。渇いている。渇望している。
そう、欲している。
この日々を塗り替えてくれるなにか。彩り。鮮やかな手口のマジック。絵本のような物語。まるで、恋のような。夢のような。嘘、偽り、虚飾。焦がれている。
押し倒し、触れる。
金の髪が散らばり、煌めく。これは輝き。夏の日差しの祝福。
あなたは手を伸ばすだろう。だが決して、その手が自分に触れることはないだろう。悟り、目を閉じる、悲しみ。午後の日差し、そして痛み。
あなたは言う。
「わたしをころして」
ひどく渇く。渇き、飢え、望んでいる。手を伸ばす。あなたの唇に触れる。それは接触。それは確認。それはぬくもり。体温。あなたは目を閉じる、慈しみ、笑む。陽に透けたまつげ。愛おしむ。あなたを構成するすべて。あなたの正しさ、弱さ、僕たちという過ち。
あなたは美しい。
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