悲鳴/寒雪
周囲を菜食主義者に囲まれた
異様な雰囲気の中
屠殺場では
今日おいしい肉になる予定の
何も知らない牛が
屠殺人にひもを引っ張られて
おずおずと場の中心に現れる
説明することもなく
粛々と準備は進み
声を挙げることの出来ない観客たちの
固唾を飲む音が刻まれた命の残り時間を
無機質にカウントダウンしているかのよう
屠殺人の右手に握られたピストルが
無表情な牛の額に狙いを定める
人事のような牛の瞳が
興味津々で銃口を見つめる
その光景を観客たちが
身を乗り出さんばかりに凝視し続ける
一秒が何時間にも感じる時の中
ついに
パン
乾い
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