黙を聞く/テシノ
 
屋根と壁が囲う空間に
電気も水もなくなって久しい
電池式の呼び鈴だけが細々と生き延びて
呼ぶものと呼ばれるものを待つ無音
応える黙を聞いている

歌が通りすぎ
語り合いも既に終わり
沈黙を敷き詰めた床で
羽が一つ死んでいる
不幸も悲哀も介入せずに
それはとてもよく馴染んでいる

誰かと一緒でなくていい
皆と同じ場所にいたい
応える黙を聞いている
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