祖父の死/寒雪
 
人のような祖父のシルエット
狐につままれたような感覚のまま
賑やかな夜は更けていく


昼からの告別式は
悲しみがうそのように晴れやかで
湿っぽい顔をしながら
弔問に訪れる人達が似合わないくらい
門出だから晴れの方がいいんだ
そう小声で呟いたのは祖母だった
告別式の間中あちらこちらから
消え入るように聴こえて来るすすり泣き
悲しい出来事なんだね
今更ながらにそう思う自分が不思議だった
あんなに好きだった祖父がいなくなることが
全く理解出来ていなかったからかもしれない


昨日からの忙しさも嘘のように去って
ようやくみんなが自分を取り戻した
みんなで集まって酒を飲みながら
ささやかな宴会の最中
居心地の悪さに席を立って外に出た
誰もいない世古道に入って
タバコの火をつけて
ゆっくりと燻らせながら
雲一つない星空を見上げると
青白い上弦の月
おまえも悲しんでくれているのか
なにも言わずにゆらゆらと立ち上るタバコの煙を
涙が零れ落ちるまでおれは見つめていた

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