祖父の死/寒雪
朝早くから祖父が死んだ
葬式の準備に追われながら
仏壇の前に寝かされた
小さく硬く冷たくなった
祖父の姿が目に入る
子供の頃
遊び疲れて歩くのを嫌がったおれを
毎日のようにおぶって帰る祖父の背中は
大きくて柔らかくて暖かかった
いつの間にこんなに時間が経ってしまったのか
大きくなった自分の手をじっと見ていた
通夜の晩
夜通し親戚たちと祖父の思い出話に花が咲く
自分にとっての祖父は
最初から最後までおじいさんだった
でも祖父にも若い頃もあり
親戚から祖父の話を聞かされると
まるで自分の知ってる祖父が
実は偽者だったんじゃないかと思うくらい
別人の
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