日記/kauzak
稲光のする夜空
降り出した雨の中
いつものように娘を迎えに行く
遮断された自動車の中
音楽さえ流せば雷鳴はかき消されて
稲光もストロボに堕ちる
はずなのに一閃されるたびに心が騒つく
県境の橋を渡り始める
雷雲に向かっているようで
一段と強く光った稲光
のあとに緑色の大輪の花が開いた
打ち上げ花火/まさか
そう思った次の瞬間
緑色の大輪の花が再び開いた次の瞬間
夜空を焦がすようにまた一閃
橋を渡り切る
と
もう大輪の花は開かない
夜空には思いついたように一閃する稲光だけ
稲光の野生の前では花火は記号でしかない
幻を見ているかのように現実感が失せたまま
ふたつの光を思い浮かべて思うぼんやりと
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