彼の鞄/非在の虹
試みに彼の鞄を持ってみる
革製のそれは大きさばかり目立つが相変わらず軽い
きっといつものように家族が入っているのだろう
そのことは彼から聞いている
彼は信用するに値する人物なのだ
だから中身の真偽を詮索する気はない
もっともわたし自身に詮索の方法がない
なぜなら彼の鞄にはクチがないのだ
ジッパーもなければ留金もない
ナイフで切り裂くと言う手段があるが
それはやり過ぎというものだろう
ジュクジュクト融ケル鞄
ワタシノ視野カラ逃レモシナイ
彼は毎日と言っていいくらい
その鞄を持ってわたしの家に
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