邂逅/國朗
 
もじもじしておりますと
「そんなものさ」
蜘蛛はそんなことを言って
どこかへ行こうと
身じろぎをします
わたくしは
なんだか急に悲しくなりまして
蜘蛛に何か言わなくてはと
口を開きかけました
すると
ばさりと音がして
膝に開いた本が落ち
目が覚めました
わたくしの手に
きらきら光る蜘蛛の糸が
絡まっておりました
もう会えないのかと
寂しくて
泣いたのは
秘密でございます




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