邂逅/國朗
ある時
古い本を膝に開いたまま
うとうとしておりますと
天井から
大きな蜘蛛が
するすると降りて参りました
そのまま眺めておりますと
その蜘蛛めは
わたくしの
本の上に降りまして
じっと動きません
わたくしのことを
見ているようでございます
「何か用かね?」
そう尋ねてやりますと
「さぁてね」
このように答えます
「なぜ動かないのかね?」
そう尋ねてやりますと
「さぁてね」
またこのように答えます
なんともしようがなくなって
「君は誰だね?」
そう尋ねてやりますと
「お前こそ自分が誰だわかっているのか?」
わたくしはなんとも言えませんで
もじ
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