みなしごとライオン/麻生ゆり
互いを必要とし
必要とされていることで
ひとひらの温もりを得ていたのであった
みなしごはライオンの背を撫ぜ
ライオンはみなしごの顔を舐める
ときに飢えたとしても
彼らはじっと耐えしのんだ
だが幸せは長くは続かない
あるときハンターがやってきて
みなしごを「救出」しに来たのだ
ライオンは頭に弾丸を受け
どう、と倒れて動かなくなった
みなしごにはわけが解らなかった
「死」という概念が欠乏していたからだ
皮肉にもライオン最期の教えは
自ら「死ぬ」ことで幕を閉じた
ハンターはみなしごを人間世界に連れていった
ハンターはライオンを剥製に
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