誰も知らない/寒雪
 


道のない
草木が生い茂る密林を
ただひたすら進む
穏やかな清流のせせらぎや
沈みゆく夕日の紅さや
心を落ち着かせてくれる
清涼剤もなく
目の前に広がる
絶望にも似た密林を
進み続ける


麓から見た頂は
冠雪に美しく化粧され
挑もうとする人々を優しく見守っている
そんな佇まいを見せていた
だが一度足を踏み入れると
行けども行けども
草木や砂利道が無限に広がって
みんなの心を折れさせる


山よ
言葉を持つなら答えてくれ
なぜそこまでに
人々を絶望に追い込むのか
ただ子供の頃のように
頂からの眺望を
無邪気に喜びたいだけなのに
頑なに
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