ぼくは何も見えない/アマメ庵
 
いつもの部屋
いつものベッド
眼鏡がない
昨日 海に落としたからだ

山を掛けるエンジン音
コオコオと風の音
メーターで60キロ足らずを確認する
微かな灯り
その表情はわからない

堤防の先
海に向かって弧を描く
バイクと共に
ドボン

夜の海は
どちらが上で どちらが下か わからない
もう煩い音はない
バイクの気配さえない

護岸に上がると 人が沢山
サンダルがない
眼鏡がない

昨夜のことを回想しながら
薬缶を火にかける
眼鏡がないのは困る
どちらの壜が塩で どちらの壜が砂糖なのか

ぼくは何も見えない
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