くさびになる夜/あぐり
 
頼みもしないのに
勝手に海がおちてきた
視界を珊瑚の乾ききった死骸が舞う
粉塵に咳き込みはしないか。
勝手におちてきた海にいる
暗く冷たいそのなかで
ぼうっと浮かび上がるわたしの肉体
ぬくもりは、(あるのか)

くるぶしをかすめていくかたまりをどうか、
きみだと信じてよいと発せよ。

わたしはいまから
きみのくさびになる




戻る   Point(1)