かくれんぼ 2/オイタル
 
ぼくは一人で
柱の陰に背をあてている

柱の外の
広がる世界のそこここに
ヤスコとトシユキとマユミとアキラと
たぶん立ったり座ったり けがを負ったり
だれかの太ももをたたいたりしているけれど
ぼくは一人でいる
柱の陰に

ぼくは広がっていかない
挑発する声も聞かない
まずは
この柱の
手の届くところまでがぼくだ
広がらないよ
ぼくは

広がるヤスコと
傷つくトシユキと
交わるマユミと
立ったり座ったり太ももをたたいたりするアキラと
ちぇ
ぼくはぼくを信じているけれど
眠ってしまいそうになる
ぼくは絶対

ぼくは一人でいる
ぼくの家に
いや 柱の陰に
いや 膝の上に
ぼくは広がらない けっして
ぼくはじっと柱の陰にいて 汗をかいて
膝に近づくハエを
静かに静かに
追い払っている
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