やわらかな殻/るるりら
 
朝露のような ものがとりかこみました。
「もういちど いいます。さあ この手を おとりっ!」そういって右手をぼくに差し出しました。

ぼくは ただ 綺麗すぎて ふるえてしまい でも綺麗すぎて てをのばして一度はそその手をつかもうとしたけれど ひっこめて身をすくませて硬く目を閉じてしまいました。

おそるおそる目をあけると、
そこには一体の女神像が立っているのでした。ただ 像は ぼくの両手におさまるほど ちいさな像なのです。女神像は 両手で石でできた鳥の巣を抱えていました。この人は いつも 石でできた卵を あたためてきたのだなあ。いつもいつも飛ばせたいと思いつづけてきたのだなあ。どんな ちいさなものにも望みはあるのだなあと 思いました。

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