音/寒雪
 


十四の夏
ぼくは夢を持つ一人の少年だった
校舎裏で友達と集まって
互いの夢を語り合う時間が
たまらなく濃密で楽しかった
その時ぼくは
自分の持つ可能性が現実だと
強く信じていた
でも
ぼくの背後で
せせら笑う友達の言葉を耳にしたぼくは
一秒後のぼくが
いったいどうなっているのかさえ
想像することが出来なかった
確かにぼくは
耳の奥底で
乾いた皮の破裂するような音を聞いた


二十二の冬
ぼくは卒業を控えた一人の青年だった
その頃
ぼくと親友と親友の彼女は
三人で誰かの部屋に集まって
色々な話を朝方まで
意味もなくしゃべるのが日常だった

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