遠い親戚/小川 葉
ある晩
遠い親戚夫婦が家を訪れた
このあたりでは
数百万円で家を買うことが出来ると聞いて
驚きました
旦那が言うと
奥さんは口に手を当てて笑った
私はまだ子供だったので
よくわからなかったけど
父があの下駄づらめと言って
帰ったあとで
強がって笑った
あれから一度も
彼らに会うことはなかった
どういう繋がりの親戚なのか
父に聞いても覚えてなくて
親戚とは
そういうものかもしれないと
最近わかるような気がしていた
お盆やお正月には
本家に親戚が集まり
誰が誰だったのかなんて
よくわからなくて
親戚だという一点で
みんながひとつだった気がしていた
私たちはごちそうを食べ
ともに眠り
ともに目覚め
まだひとつであることを
確かめ合うためそこにいたのだ
今年も妹夫婦から
不在通知が届いている
お中元を送ってくれたのだ
もしかてあの夫婦は
むかし実家の花壇に咲いていた
チューリップかもしれない
数百万円で家を買って
咲いていた花を
私が見ていた記憶なのかもしれない
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