背中/寒雪
 


子供の頃
遊び疲れた僕をおんぶして
家に帰る母親の
大きくて広い背中
悪いことをした僕に
容赦なく
平手打ちを食らわせた母親の
大きくて強い手のひら


大人になって
一人暮らしの僕を訪ねた母親の
別れ際に見せた
地下街の雑踏に弾かれそうな
儚げで頼りなさげな後ろ姿
思わず
手を伸ばして影を捕まえようとした


僕はいつでも
母親の
大きなゆりかごのような
大きな愛情に包まれて
大きく成長してきた
反発もしたし喧嘩もしたけど
それでも
母親の愛情に僕はいつでも育てられた


消えていく母親を見つめながら
僕はいつでもあなたの息子ですと
誰に聞かせるわけでもなく呟いた


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