さよなら二十世紀/小川 葉
 
 
 
朝めざめると
あなたは哀しい
人の形をしていた

毎朝きまって
そうなのだとしても
本当のことは
けっして言わなかった

言葉にできないことや
したくないことを
たくさん胸に秘めて
生きていかなければならなかった
今日という一日が
訪れるたびに
去りゆくたびに

朝めざめると
あなたは美しい
人の形をなくしていた
やがて今日ではない一日が
訪れるとしても
去りゆくとしても

わたしはその輪郭を
指でなぞりながら
あなたがそこにいたことを
いつまでも忘れない
 
 
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