餓鬼が嗤う/熊髭b
 


途切れることのない草の匂いにどこかしら恐怖を感じながら
俯瞰できずに彷徨う夢を見た
朝目覚めると 季節はいつの間にか
冬であった





「それは大きな巨人である」
昨日まで人々は、細々と噂話をしていた気がしたが
いったいどうしたことか
眼前では
自らの手に巨人の肉を携えながら
誰彼かまわず、自らの獲物を喰らうことに夢中になっている
分け与えもせず
いや
むしろ奪う必要のない飽食、と餓鬼が嗤う

よく目を凝らして観察してみると
喰らっているのは巨人ではなく
生まれる前の胎児のような肉の切れ端だった
あまりにも不気味な風景から逃げるように

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