昆虫図鑑/ゆるこ
蝶
小さい頃
簡単に見つけられていた
色のない蝶々が
最近見つけられなくなってきた
視界の端で
鋭利に騒ぐ蝶々を
捕まえてはネットの中に
押し込めることを
よく していた
蝶々は
データになると
それは不思議な香りを
放ちながら
摩訶不思議な数列を
ちらつかせていた
それは
魔法のように
鮮やかで
私はそれを
詩と呼んでいた
よく 褒められていた
私の捕まえた蝶々は
意味不明だった
蟻
夏になると彼等は
おじゃましますも言わずに
私の家にのさばって
はいずり回っている
私達家族は
夏だけ優しい
ありがとうを
念仏のように呟いている
蟻が十、蟻が十、
蜂
下着から出てきた毒針は
確実に私を捉えていた
あのけむくじゃらの四肢が
子宮からゆっくりと追い撃ちをかけている
呼吸すれば
気づかれてしまうから
私の口の中を
果物で埋め尽くしてしまおうか
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