親密なHello/なを
肌を
撫でて、死んだ子供のことを考える
すみやかに大量に死んだ子供のことを
ゆっくりと孤独に死んだ子供のことを
親密なHello,
の、ように乳と蜜の匂いのする髪を噛んで
死んでしまった子供のことを考える。薬品と清潔なシーツの匂いのなかで
死んだ子供のことを。糞尿と血の匂いのなかで死んだ子供のことを
わたしはあなたのうつくしいかたちのてのひらをつかんで
あなたの歪んだ身体と感情に溺れるように
黄色いブイのむこうまで泳いで
死んだ子供の重さのせいで海の水があふれて
フランチェスカ
あなたの足首まで苦い水が浸して
ごめんね
ぜんぶわたしのせい、だなんて
自分勝手なあまい言葉は砂糖漬けのチェリーのようで
アイスクリームが溶ける
死んでしまった子供たちに
無為なお祈り
砂のうえにチェリー
遠い雷にみみをすます
無言電話のむこうの呼吸音が
ふたり乗りの背中で弾む
あふれる世界のバスタブの
親密なHello
Hello,
Hello
(初出/「miel」2号 藤坂萌子発行)
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