七夕/佐野権太
 
娘たちは
もう眠ってしまった
何も書かれていない短冊がひとつ
テーブルに置かれている

なあ、父さんは
こってり疲れてしまっているから
願いごとなんて
ひとつも浮かばないんだ

静かに網戸を引くと
よりかかっていた笹の葉が
しゃらしゃら
心地のよい音色にひるがえる
おれんじの短冊
(まじしゃんになれますように

縁側に座り
缶ビールのプルトップを引く
湿った風に重心を失っている
みずいろの短冊
(おとうさんがはやくかえってきますように

雲の多い空の隙間
星を探しながら
ひとり
風のゆくえを探している
 
 
 
 
 

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