ゆり文月/小池房枝
夕方の水が巡って夜前につぼみのたががひとひら外れた
ひとつふたつ互いに互いの花びらが外れてそしてそりかえって咲く
カサブランカ自分で咲いたね信じてはいたけどつぼみに手が出そうだった
ふくらんだつぼみがどうして本当にひらきえるのかやっぱり不思議だ
蝶か何かとらまえたときの両の手を合わせた形に百合が膨らむ
むきたての果物のように滑らかな百合のつぼみが裂けてはじける
咲く直前つぼみは軽くなるような気がする片手であやしてて気づく
ひとつめの百合は満月に咲きました妹たちもそろそろでしょう
いつつ揃えた指先のように窮屈な形でつぼみの中にいたのね雄蕊
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