ランドリークルーズ/メチターチェリ
 
らしいパルセーターの振動音はうつろに響き
船を漕ぎ始めている私は それでも機械的におにぎりを咀嚼した

それにしても居並ぶ洗濯機はどう座り直しても心地が悪く
30秒ごとにケツの重心を置き替えないとしびれ疲れてしまいそうだ
パイプ椅子くらい置いていてほしかった……

     ***

遠くで雨の音がしている

気がつくと航海を終えた衣服が水揚げのときを待っていた
揉まれて摺りあわされて体中の水分をねじり絞られたボロ雑巾のように疲弊しきった衣服たちをそっと抱きかかえると 落とさないようにエコバッグに寝かせた
私自身も身体の節々が錆びついたように重かった
傘が無いから走って家まで帰らなければいけない

極力はシワを伸ばして
部屋に張ったビニールテープに洗濯物を吊るしていく
朝まで私の部屋は生乾いた合成繊維の淫靡な匂いで満たされることだろう
着古した部屋履きの放つ人工的な臭気にどこか懐かしさすら覚えるはずだ
濡れた着衣を改めて洗濯カゴに投げた
セクシャルで完結した夜が夢見られている
戻る   Point(7)