トーキョー/望月 ゆき
{引用=頂点はさらに、高さを増す。塔の上に塔を
重ね、そのようにして時代はいつも、賑や
かに葬られていく。足元には、無数のメタ
セコイアが植えられ、手をのばして、空を
仰いでいる。道は、休むことなくつくられ
た。わたしたちが迷わないために。
積み木をくずす所作で、戦争がはじまる。
無邪気に、そのありふれた朝を、穿つ。庭
では、熟れすぎたトマトが朱く弾け、読ま
れることのない朝刊を汚す。子どもたちは
その時も、背中のランドセルをカタカタと
鳴らしながら、走っていただろうか。まっ
すぐ、目の前にのびる道を。
公園のベンチに座って
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